1993年の夏。信州志賀高原にて日本イエス・キリスト教団青年全国大会が行われた。 その大会のテーマソングを信徒の作曲によるものとするため、特に開催のホストとなった 京都教区と信越教区からテーマソングの候補を募った。いくつもの応募曲が寄せられ、 その中にはアートとして観賞に堪えるものも少なくない。

さて、いくつかの審査を経て、最終的にはA面の一曲目に収録された高橋由美子 （当時は西村由美子）による「My Work それは私のあかし」が採用された。 8ビートのポップなリズムの中にもマイナーな響きが相まって、いわゆる「信仰」が 巧みに表現されている。特に、曲の始まりにおけるメロディーは同一のフレーズが 繰り返されるものであり、かつ、音の上下間隔が離れているため、 ある種のリズム楽器のような効果さえ備えている。
これは、独創的なベースのリズムパターン（これは基本的にルート音が下降ラインをとっており、 全体の音の流れを形成している。）との絡みによって歌うものの精神を、後のクライマックスに 向けて淡々と整えていくようでもある。
中盤においても同様で、ベーシックなサウンドでありながらも、所々、作曲者自身の 巧みな和音進行を取り入れ、最も高揚する場面への備えが確実になされていることを 感じるのである。

「Work 目を上げてごらん」 は、当時関西聖書神学校の神学生であった、仲本陽子姉妹による作品である。 本作品は半音進行を巧みに取り入れたメロディーラインといい、比較的単調なコード進行といい、実に 現代的な音作りがなされている。歌詞も対句的な要素が多く含まれていて、その語呂のよさに感心する。

同じく仲本陽子姉妹による作品で、本青年全国大会のテーマにそった「My Work それは私のあかし」がある。 この曲も先の曲同様、現代的な作風を感じるものである。アレンジとしても、特にベースラインが印象的で、 ドラムの特徴あるパターンとあいまって、独特のリズムを醸し出している。曲の半ばに導入されたシタールの 音色もこの曲の聴きどころのひとつであろう。

「生きることはキリスト」の原形はきわめて、”かわいらしい”ものであるが、ここではいくらかムーディーな アレンジがなされている。仲本陽子姉妹による作品。

「罪ゆるされ」は先の仲本陽子姉妹による作品である。この曲は実際の大会の中では歌われなかったが、 そのキャッチーなメロディーラインは聴くものの心を捉えるものがあるだろう。基本的には一つのコードパターンを 繰り返すものではあるが、メロディーラインは繰り返しの中で5度上げるなどして、より印象的なフレーズを 耳に残すようにしている。

「あなたに満ちてる」も残念ながら本大会では歌われることはなかった。曲は比較的単純な 構成であるが、歌詞の繰り返しの中で一人の信仰者が神に求めていく姿が浮き彫りにされており、 そういう点からも、一人で何気なく口ずさむのにふさわしい曲である。

旧姓高野その子姉妹は、本大会で唯一、「伝えるために 」を残している。本作品は大会中でも賛美され、 好評を博した。この曲も構成としては、オーソドックスなものであるが、そうであるがゆえに、非常に 印象に残るものとなっている。ベースライン、ドラムパターン、トランペットによるオブリガードなども、 この曲のイメージを形作るのに一役買っている。

「My Work 生きることはキリスト」は実に聴きごたえのある曲である。曲の構成はオーソドックスではあるが、 ところどころ臨時記号によるラインの変化があるが、それが落ち着いた中に緊張をもたらして、いわば曲に 締まりを与えていると考えられる。アレンジも壮大かつ繊細で、｢生きることはキリスト｣のテーマを的確に 表現している。

さて、あなたにとって「生きること｣は何であろう？その答えをここで見つけてほしい。 ▲